いわずと知れたフランスの偉大なシャンソン歌手エディット・ピアフ。
最も有名な「愛の賛歌」は世界中のあちこちでたくさんの方がカバーされてますよねぇ。
私の実家には母が音楽好きなこともあって、それはそれはたくさんのレコードとカセットテープが今でも山盛り家にありまして。
昭和の中頃に青春時代を生きた人達の音楽は、フォークソングだったりブルースだったりシャンソンだったりしますが、とにかくやっぱり本当に歌のうまい歌手が多いなぁって思うんですね。
今の流行の曲もいいものがたくさんあるんですけど、私は少し昔の時代の曲が大好きです。
基本的に、今みたいに機械も技術も発達してないので、録音はほぼ生音に近い。
加工してないものには、生であるが故のパワーを感じるなあと。
愛の賛歌も大好き。聴くたびに息をのむ歌唱力に圧倒されて感動と同時に奈落の底に突き落とされたみたいな気持ちと背中合わせなんですが、たびたび聞きたくなります。
学生の頃は、知識だけで聴いていた歌詞ですけど大人になってそれなりに恋愛も失恋も経験してから聴くと、ものすごいエネルギーと感情が歌から伝わってくるんですよね。
時は1949年10月27-28日のフランス。恋多き女性といわれたピアフの生涯で最も愛したといわれる お相手は、当時フランス中を湧かせていたボクシングの世界チャンピオン、マルセル・セルダン 。彼は妻帯者で子どももいたんですけど、なんのその。
メールなんてないこの時代、ピアフは2日に一回せっせとボクシングの試合で外国をまわるセルダンにラブレターを送り続けていたそうです。そのあふれんばかりの彼への愛を歌詞に変え、 マルグリット・モノーが作曲し たのが「愛の賛歌」。
ピアフがはじめてこの歌を歌うステージを聴きに来るためにセルダンが乗ったニューヨーク行きの飛行機が墜落し、彼は帰らぬ人となるのです。
越路吹雪さんの歌われる日本語訳は、とてもしっとりして純愛の透明感にあふれている感じでそれはそれはセンスのある訳詞だなあと思うんです。
対して、フランス語の原詩はもっと過激で、恋愛にのめりこみすぎて危ない匂いもするくらいの表現にあふれています。
たとえば原詩に近い日本語訳は
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私は大金も盗んでみせる
あなたが求めるなら
私は国を捨て
私は友を捨てる
あなたがそれを望むなら
人にどう笑われようと
私は何でもする
あなたが望むなら
もしもある日、運命があなたと私を引き裂き
もしもあなたが死に、遠い存在となっても
構わないわ、あなたが愛してくれるなら
なぜなら、私も一緒に死ぬから
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とか。吹雪さんの歌う日本語の歌詞は
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あなたの燃える手で
あたしを抱きしめて
ただ二人だけで 生きていたいの
ただ命の限り あたしは愛したい
命の限りに あなたを愛するの
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学生の頃、そんなに深く考えたことはなかったけど
友達や家族を失ってまで選ぶ相手なんて幸せになれっこないという程度のことは思った記憶がありました。だから、なんとなく日本語のキレイな純愛の雰囲気が好きだったんですけど、今はやっぱりフランス語の歌詞がこの歌にはしっくりくる気がします。
そんな冷静な恋愛分析ができるくらいなら、この歌は生まれてなかったんですよね。
想像するのもつらいほど、味わいたくはない悲しみですが
彼女の奔放で自分にまっすぐな人間性と歌からにじみ出る歌手としての強さが
何十年たった今もこんなにたくさんの人を惹きつけるんだろうなぁ・・・
後にピアフは47歳の若さで亡くなります。
葬儀のあったパリには世界中からファンが押し寄せ、第二次世界大戦以降、後にも先にもパリの交通が完全にストップしたのはピアフの葬儀の時だけだったそうです。
この歌を聴くとね。
家族も友達も含めて、好きな人と普通に一緒に居られること、当たり前みたいな
毎日って本当にありがたいことだなーと感謝せずにいられなくなります。
大好きな音楽のひとつ、私のお気に入りです♪
灯里
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