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執筆者の写真灯里

9月19日 蜜蜂と遠雷@小説

更新日:2019年9月20日


映画の公開まであと2週間くらいになりましたねー。

恩田陸さん原作の「蜜蜂と遠雷」。


恩田陸さんの書く小説はとにかくいろんなジャンルがありますが、デビュー作の「6番目の小夜子」から初期の作品を数多く読んできた私は、わりとミステリ・SFっぽいお話と抒情的な表現が得意でピカイチの作家さん、という認識でした。


3年前のとある日、書店に目立つようにレイアウトされた

絵画調の表紙のハードカバーをみて、「あ、恩田さんの新作だー。今回もなかなかすごい大長編だなぁ。」と思って手に取った記憶があります。

そのうえ、ぱらっと中を見るとラストのページは500ページを超えていて、しかも1ページは2段組み。どんだけの文章量!!


電子書籍は便利ですが、許す限り実際の本が読みたいの。

灯里さんはアナログ人間なのです。

パソコンより手書き!電子より紙!!

がいまだ根強く残る、アンエコロジー人間。。

いいじゃないか!本好きなんだい!図書館最高!!


そんなわけで、お財布が許す限り本を買います。

そして欲しい!と思ったらあんまり我慢のできない灯里さんは

文庫本になるのが待てません(笑)

本も食べ物も欲しいと思った時が食べ頃、読み頃。

もっとも脳と体に栄養の入るゴールデンタイムだと信じているわたし(笑)


機を逃してなるものかと当時即買いしました。


後に直木賞と本屋大賞をW受賞したので、今年は文庫化され漫画化され映画化されの

お祭り騒ぎですね~


この小説は「ピアノコンクール」を題材に、 それぞれのピアニストの想い、葛藤、友情、愛情などを描かれた、いわゆる青春群像劇。

恩田さんはインタビューの中で「ピアノコンクールを最初から最後まで書いてみたかった」とコメントしていました。着想から書き初めまで5年、書くことに難航したこともあって、3年に一度のコンクールに4回も足を運び、10年以上の歳月をかけてようやく書き上げた作品なんだそうです。恩田さんのその熱量も本当にすごいです。

余談ですが、小説ってまず「書ききる」ことが難しくて、最初の難関だなぁって思います。


これから映画を楽しみたい人もいるので、中身に触れるのはやめておこうかなと

思うんですが、先日ふだんはあまり小説を読まない妹が、このお祭りフィーバーにあてられて、読んだ時にわたしにこんなことを聴いてきました。



「結局、蜜蜂と遠雷ってどういう意味?」



ふむ。


この疑問は、色んな読者が抱き、色んな解釈があるみたいでした。


キーとなる、アプローチの違う天才肌のピアニストが4人でてきます。

そのうちのひとり風間塵。


小説を読むとわかるのですが、彼は小説の冒頭でこう感じているシーンがあります。


ーーー明るい野山を群れ飛ぶ無数の蜜蜂は、世界を祝福する音符である。


そして小説の後半では


ーーー 遠いところで、低く雷が鳴っている。冬の雷。何かが胸の奥で泡立つ感じがした。稲光は見えない。


風間塵という一人のピアニストが、激動渦巻くコンクールの時間の中で見たものがタイトルにある景色。蜜蜂は音符(=世界共通言語)。遠雷は今はまだ見えないけれど、確実にある気配、音楽の神様に愛される音楽、可能性の象徴なんじゃないかと。


そして私はもうひとつ、遠くあちこちに散らばっているピアニストたちが

頂上の座を目指してコンクールに集結し、一次、二次、三次予選と来るべき最終ステージにむかい苛烈さを高めていきます。自分との闘いでもあり、他者との争いでもあるそのコンクールのピリピリとした熱帯低気圧。日ごと勢力拡大していく様子は、まさに嵐。


遠くからそれぞれがその兆しを背負い、嵐そのものを巻き起こす

このピアノコンクールそのものも遠雷のようだと感じました。


これだけの超大作にタイトルをつけるのは至難の業だと思いますが

この言葉選びのセンス、やはり恩田さんの感性はすごいです。


久々に読んだら、読み終えた後、初めて呼吸をした気持ちになりました。


読み終えると、じつはピアノの音ではなくて、

虫の羽音や、風の鳴る音、世界の息づく音が聞こえてくるような一冊です。


原作、大長編だけどきっと一気に読んじゃうと思いますよ~


映画楽しみです♪♪



灯里





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